研究

月経血でHPV検査が可能に?英医学誌BMJで報告

医師採取の子宮頸部検体による検査と精度同等、中国・地域住民3068人を対象に検証

ナプキンの上に赤い粒が置かれ、月経を象徴的に表現したイメージ。
月経血が検査に使える可能性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 子宮頸がんの主因である高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)を、月経血から検出する新しい検診アプローチの実用性が大規模に検証された。

 中国の研究グループが2026年2月、英医学誌BMJで有望な結果を発表した。

「月経血」で検査するという発想

「HPV-Test」と表示された検体チューブを手に持つ医療従事者の様子。
HPV検査を象徴する検体チューブのイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 子宮頸がんはHPVの持続感染が関与し、早期発見のための検診が重要だが、内診への不安や羞恥心、医療アクセスの格差が受診の障壁となっている。
  • 自己採取法もあるものの抵抗感や手技の難しさが普及の課題であり、研究グループは月経血を用いたHPV検査の有効性を検証した。
  • 中国の女性3068人を対象に、月経血・医師採取検体・細胞診を比較し、陽性例は生検で確認して検査精度を評価した。

 子宮頸がんはHPVの持続感染が発症に関与し、検診による早期発見、早期の対策が、がんを防ぐために重要と見なされている。

 一方で、内診を伴う医師採取は、痛みへの恐怖、羞恥心やプライバシーへの懸念、医療資源へのアクセス格差などにより受診の障壁となり得る。

 そうした中で自分で膣内の検体を取る方法も存在しているが、自分で膣内から採取することへの抵抗感や手技の難しさなどが普及を妨げる面もあった。

 そこで、今回、研究グループは、毎月の月経血に着目し、これをHPV検査に使えるかどうかを検証した。一般のナプキンに貼り付けて使える綿素材の「採取ストリップ」を用意して、参加者が自宅で月経血を採取して提出する流れを作った。

 対象は中国・湖北省の都市部と農村部の地域住民で、月経周期が規則的な女性3068人(2021年9月〜2025年1月に登録した20〜54歳)。

 各参加者は、採取ストリップで採取した月経血、医師採取の子宮頸部検体によるHPV検査と、液状化検体細胞診(保存液で処理した細胞を使った検査)という3つの検体を提出した。

 これらの検体のいずれかが陽性(どちらかのHPV陽性、または正常とは言い切れない軽度の異型=ASC-US以上の状態が確認された場合)の場合に、精密検査(コルポスコピー下生検)へ進み、病理診断を参照の基準として精度を評価した。

「感度」同等、「陰性的中率」99.9%

医療従事者が女性に問診を行い、クリップボードに記録している様子。
医療機関で問診やカウンセリングを受けている様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 月経血を用いたHPV検査は、医師採取によるHPV検査と同程度の精度を示し、CIN2以上の感度は94.7%で医師採取(92.1%)とほぼ同等、陰性的中率も99.9%で一致した。
  • 月経血で多く検出されたウイルス型はHPV52、HPV16、HPV58で、医師採取と同様の傾向が確認された。
  • WeChatのミニプログラムを活用し、結果提示から医療連携までを一体化できる体制を整備し、HPV検査普及の有効な手段となる可能性が示された。

 結果として、月経血を使ったHPV検査は、医師が子宮頸部から採取したHPV検査と同程度の精度を示すことが確認された。

 主な評価指標としては、主要な評価である前がん病変(CIN2以上)を見つける力(感度)が、月経血HPV検査は94.7%で、医師が子宮頸部から採るHPV検査が92.1%で、ほぼ同じだった。

 このほか陰性と言われた人が本当に病変なしである確率(陰性的中率)はいずれも99.9%で一致した。

 HPVには複数のウイルス型が存在するが、月経血での陽性者に多かったウイルス型は、HPV52、HPV16、HPV58で、医師採取でも同様の傾向が見られた。

 意義は、精度だけではない。

 研究では、通信アプリであるWeChat上のミニプログラム「Early Test」で、結果の提示、解釈、医療者との連絡、教育コンテンツ提供までを一体化することができた。これにより陽性者を精密検査につなぐ体制構築にも貢献すると考えられる。

 こうした結果から、月経血を用いた検査は、HPV検査を広げるために有効な手段になる可能性がある。

参考文献

Tian X, Cao C, Wang L, Zhang J, Chen Y, Tian R, Zhou B, Sun L, Zhang C, Gan L, Jin Y, Liu J, Wang T, Shen Y, Huang S, Zhang L, Zhang S, Chen P, Tong C, Kang J, Fan H, Zhou G, Xiang L, Wen Y, Gan R, Chen Y, Li X, Zhai L, Zhang Q, Ma D, Han Z, Hu Z. Testing menstrual blood for human papillomavirus during cervical cancer screening in China: cross sectional population based study. BMJ. 2026 Feb 4;392:e084831. doi: 10.1136/bmj-2025-084831. PMID: 41638692; PMCID: PMC12869892.
https://doi.org/10.1136/bmj-2025-084831

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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