──今回の研究結果が示された後、日本の乳がん検診では何が課題になるのか。
原田氏:私たちの研究では、40代において、マンモグラフィに超音波を併用する上乗せ効果が示されました。マンモグラフィ単独に比べて、より多くの乳がんが発見され、長期追跡では、進行した状態で見つかる乳がんの累積罹患が低くなりました。
ただし、超音波併用を日本の乳がん検診の標準にするかどうかは、私たち研究者が決めることではありません。国が、効果だけでなく、不利益、費用、実施体制などを含めて判断することになります。
また、有効性が示された検診があっても、対象となる人に受けてもらえなければ意味がありません。検診を受ける必要性を知ってもらい、実際の受診につなげることも重要です。
──日本では、乳がん検診を受ける人が少ないことも課題になる。
原田氏:日本の乳がん検診の受診率は、依然として高いとは言えません。どれだけ有効な検診を、きちんと精度管理して提供しても、受診してもらえなければ効果は得られません。
マンモグラフィが痛いから受けたくないという方もいるでしょうし、検診を受けても意味がないのではないかと考える方もいるかもしれません。乳がん検診の意義をどのように伝え、受診につなげるかは大きな課題です。
現在、国の指針に基づく乳がん検診では、マンモグラフィが基本です。まずは、有効性が確立しているマンモグラフィ検診をきちんと受けていただくことが大切です。一方で、今回の超音波併用の研究結果が、乳がん検診に関心を持つきっかけになることもあると思います。
──検診で異常が疑われた後、精密検査につながらない人もいる。
原田氏:乳がん検診に限らず、精密検査が必要と判定されても、実際には受診しない方がいることは問題になっています。
検診は、最初の検査だけで完結するものではありません。異常が疑われた場合に、必要な検査や診断につながるところまで含めて、検診の仕組みです。
最近は、対象者への受診勧奨や、精密検査が必要と判定された人が実際に受診したかどうかの確認まで、組織として行う「組織型検診」の重要性が、学会などでも話題になっています。対策型検診か任意型検診かにかかわらず、検査後まで含めて支える仕組みが重要だと思います。
- 超音波併用を標準検診にするかは、効果だけでなく、不利益、費用、実施体制を含めて国が判断する。
- まずは有効性が確立しているマンモグラフィ検診の受診率を高め、検診の意義を適切に伝えることが重要になる。
- 検診は受けて終わりではなく、要精密検査者への受診勧奨や受診確認まで行う「組織型検診」の仕組みが求められる。
──高濃度乳房かどうかを、本人に知らせるべきだという議論もある。
原田氏:高濃度乳房の通知については、今後さらに議論が必要になると思います。
日本では、自分の乳房濃度を知る機会がない方も多くいます。一方、米国では、2024年9月から、マンモグラフィ施設が受診者に乳房濃度を通知することが連邦規則で義務付けられています。自分自身の情報ですから、知りたいという方がいるのは当然だと思います。
日本でも、任意型検診などで、希望する方に乳房濃度を知らせている施設があります。また、2026年3月には、日本乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本乳がん検診精度管理中央機構が、情報提供体制を整えた上で、乳房構成を受診者に通知することが望ましいとの共同見解を公表しました。
高濃度乳房では、マンモグラフィで病変を見つけにくいことに加え、乳がんの罹患リスクが相対的に高いことも報告されています。ただし、高濃度乳房は疾病や異常所見ではなく、それだけを理由に要精密検査としたり、一律に追加検査を受けたりする必要はないとされています。
そのため、日本全体として、どのように通知し、その後どのような対応につなげるかについては、引き続き検討が必要です。
──乳房濃度を知らせるだけでは十分ではない。
原田氏:そうです。高濃度乳房だと知らされた方にとって、次にどうすればよいのか、超音波など別の検査を受けるべきなのか、どこに相談すればよいのかという受け皿が必要です。
情報だけを伝えて、その後の対応が示されなければ、受診者の不安を強める可能性があります。高濃度乳房という情報だけで、すべての人に必要な対応が一律に決まるわけではありません。
通知を検討するのであれば、高濃度乳房がマンモグラフィで乳がんを見つけにくくすることや、その人の年齢、家族歴なども含め、次に何をすべきか相談できる体制まで考える必要があります。
──DWIBSのような、被ばくや造影剤を伴わず、服を着たまま受けられる新しい画像検査についてはどう考えるか。
原田氏:検査自体を否定するわけではありませんが、検診としての精度には、まだ分からない点があります。また、異常が疑われた場合に、精密検査や診断につなげる受け皿が十分に確保されていない場合もあります。
一方で、被ばくがなく、服を着たまま受けられるなどの利点もあります。きちんとエビデンスが構築されれば、有用な検査になる可能性はあると思います。
ただ、実施できる施設は限られ、費用もかかります。都市部と地方では利用しやすさにも差が出るため、そうした点も考える必要があります。
──乳がん検診の今後を考える上で、何が重要になるか。
原田氏:まずは、有効性が確立している乳がん検診を、きちんと受けてもらうことです。どれだけよい検診があっても、受診する人が少なければ、その効果を十分に発揮できません。
今回の研究で、40代における超音波併用の上乗せ効果が示されましたが、それを日本の標準的な検診にするかどうかは、国が判断することになります。
また、乳房構成を知らせるのであれば、その後にどのような対応が必要なのか、相談や検査の受け皿も併せて考えなければなりません。検診の意義を知ってもらい、実際の受診につなげることが大切だと考えています。(終わり)