研究

がん遺伝子パネル検査後の推奨治療と生存期間―東北大学病院1643例の解析

1643例の追跡で治療提案、実施率、検査後の生存期間を検討

遺伝子解析の画面と顕微鏡を背景に、手袋をした手が検体チューブを持っている。
東北大学病院の解析では、がん遺伝子パネル検査を受けた患者の7.2%が、検査結果に基づく推奨治療を実際に受けていた。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 がんの遺伝子を詳しく調べ、治療薬や治験を探す「がん遺伝子パネル検査」が、実際の治療やその後の経過にどの程度つながっているのか。東北大学病院が1643例を追跡したところ、検査結果を基に提案された治療を実際に受けた患者では、その後の生存期間が長かった。

 東北大学などの研究グループが2026年7月14日に発表した。

遺伝子の特徴から治療薬を探す

病室で医師が点滴を確認しながら、ベッド上の患者と付き添いの家族に説明している様子。
がん遺伝子パネル検査の結果を基に推奨治療を受けた患者では、検査後の生存期間が長い傾向が示された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 東北大学病院で2019年9月から2024年6月までに行われた、1643例のがん遺伝子パネル検査を解析した。
  • 約67%で治療標的となり得る遺伝子変異が見つかり、14.6%に新たな治療が提案された。
  • 全体の7.2%に当たる118例が、検査結果を基に実際に推奨された治療を受けた。

 がん遺伝子パネル検査は、がん細胞に生じている多数の遺伝子変化を一度に調べ、その特徴に合う薬や治験がないかを探す検査だ。

 がんの治療は、肺がんや乳がんといった発生した臓器だけでなく、がん細胞が持つ遺伝子の特徴に応じて薬を選ぶ治療が広がっている。日本では2019年から、一定の条件を満たす患者を対象に、がん遺伝子パネル検査が保険診療として行われている。

 検査後は、医師や病理医、遺伝カウンセラーなど複数の専門家が結果を検討し、使える可能性のある分子標的薬や、参加できる可能性のある治験などを話し合う。ただ、実際に提案された治療まで進める患者は限られ、検査がその後の生存にどの程度結び付いているのかは、実際の診療データによる検証が十分ではなかった。

 研究グループは、2019年9月から2024年6月までに東北大学病院で行われた1643例のがん遺伝子パネル検査を対象に、検査後の治療や患者の経過を調べた。

 解析には、東北大学病院と日立ハイテクが共同開発した「エキスパートパネル支援システム」を使用した。患者の情報や遺伝子変異、治療提案、その後の経過などを一元的に管理し、継続して追跡できる仕組みだ。

 その結果、約67%の患者で、治療の標的となり得る遺伝子変異が見つかった。また、全体の14.6%に新たな治療が提案され、7.2%に当たる118例が、実際に推奨された治療を受けていた。

推奨治療を受けた患者は生存期間中央値21.0カ月

DNAの二重らせん構造と、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの塩基構造を描いた図。
がん遺伝子パネル検査では、がん細胞に起きている遺伝子の変化を調べ、治療薬や治験につながる手掛かりを探す。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 推奨治療を受けた患者の検査後の生存期間中央値は21.0カ月だった。
  • 治療を提案されたが受けなかった患者は12.9カ月、治療提案がなかった患者は13.5カ月で、推奨治療群の方が長かった。
  • 推奨治療を受けた患者の約6割では治療が100日以上続き、遺伝子パネル検査の結果を実際の治療につなげる重要性が示された。

 検査後の経過を比べると、推奨治療を受けた患者の生存期間中央値は21.0カ月だった。

 一方、治療が提案されたものの実際には受けられなかった患者では12.9カ月、治療の提案がなかった患者では13.5カ月だった。推奨治療を受けた患者では、他のグループより生存期間が統計学的に長かった。

 また、推奨治療を受けた患者の約6割では、治療が100日以上続いていた。がんの種類別では、甲状腺がん、乳がん、肺がん、前立腺がん、胆道がんで、比較的多くの患者が新たな治療につながっていたという。

 今回の結果は、遺伝子パネル検査で見つかった治療選択肢を、実際の治療につなげることの重要性を示すものとなった。

参考文献

がん遺伝子パネル検査による新たな治療選択が予後改善を示唆 ―東北大学病院1,643例のリアルワールド解析―(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/07/press20260714-01-mtb.html

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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