世界

オーストラリアで子ども向け食品広告の規制を求める動き

公衆衛生団体がSNSやゲームを含む不健康な食品広告の規制を政府に要請

夕焼けの空の下に広がるシドニーの港とオペラハウス、ハーバーブリッジ。
オーストラリアでは、子ども向けの不健康な食品や飲料の広告規制を求める公衆衛生団体の動きが強まっている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

子どもが日常的に目にする「ジャンクフード」の広告を減らし、将来の肥満やがんリスクの低減につなげようという動きがオーストラリアで強まっている。

キャンサー・カウンシル・オーストラリアなどの公衆衛生団体は2026年6月、子どもを対象とした不健康な食品や飲料の広告をより厳しく規制するよう、政府に求める共同声明を発表した。

SNSやゲーム、スポーツ協賛まで広がる食品広告

飲み口が開いた缶飲料を上から見た様子。
子どもが日常的に目にする清涼飲料や加工食品の広告をめぐり、オーストラリアで規制強化を求める声が上がっている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 子どもはテレビだけでなく、SNSやゲーム、スポーツ協賛、店頭など幅広い場面で不健康な食品の広告に触れている。
  • オーストラリアでは2~17歳の4人に1人が過体重または肥満とされ、公衆衛生団体は包括的な広告規制を求めている。
  • 家庭だけに健康的な食生活を求めるのではなく、子どもが健康的な選択をしやすい環境づくりが必要とされている。

子ども向けの食品広告というと、テレビCMを思い浮かべる人が多いかもしれない。だが現在は、SNSやゲーム、スポーツイベントでのスポンサー活動、店頭など、さまざまな場面で不健康な食品や飲料の宣伝に触れる機会が増えている。

今回の共同声明では、子どもが生活し、学び、遊ぶあらゆる場所で、こうした広告への接触を減らすための包括的な法規制が必要だとしている。

キャンサー・カウンシル・オーストラリアは、不健康な食品や飲料の広告が日常的に目に入ることで、家庭で健康的な食生活を促そうとする取り組みを妨げる可能性があると指摘している。

オーストラリアでは、2~17歳の4人に1人が過体重または肥満の状態にあるとされる。

また、オーストラリアでは、2022年に成人の96%が果物や野菜を推奨量まで摂取できておらず、1人当たりの遊離糖類の摂取量は1日平均67グラムと、推奨量の1.3倍を超えていたとされる。

こうした状況を背景に、キャンサー・カウンシル・オーストラリアは、子どもの健康的な食生活を支える環境づくりが必要だとしている。

肥満対策は将来のがん予防にも

トレーに載ったチーズバーガーを手で持ち上げようとしている様子。
過体重や肥満は、大腸がんや閉経後乳がんなど複数のがんのリスク上昇と関係するとされる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 過体重や肥満は、閉経後乳がんや大腸がんなど13種類のがんで発症リスクの上昇と関係するとされる。
  • オーストラリアでは、過体重が年間5200件を超えるがんに関連していると推計されている。
  • 食品広告の規制で直ちに肥満やがんが減ると確認されたわけではないが、将来のがん予防につながる環境整備として注目される。

今回、がん対策団体が食品広告の規制を求める理由の一つが、肥満とがんの関係だ。

キャンサー・カウンシル・オーストラリアによると、過体重や肥満は、閉経後の乳がん、大腸がん、腎臓がん、肝臓がん、子宮体がん、卵巣がん、胃がん、甲状腺がん、食道がん、胆のうがん、膵臓がん、多発性骨髄腫、進行前立腺がんの13種類で、発症リスクの上昇と関係している。

また、オーストラリアでは、過体重が年間5200件を超えるがんに関連していると推計されている。

食品広告を規制すれば直ちに肥満やがんが減ると確認されたわけではないが、子ども自身や家庭の努力だけに任せるのではなく、健康的な選択をしやすい環境を整えることが重要とされる。

今回の提言はオーストラリア国内の政策をめぐるものだが、子どもがデジタル広告に触れる機会が増えているという点は、日本にも共通する。将来の生活習慣病やがん予防を考える上で、子ども向け食品広告をどこまで社会として規制するのかという議論は、今後さらに注目されそうだ。

参考文献

Cancer Council Australia and public health leaders call for junk food marketing restrictions(Cancer Council Australia)
https://www.cancer.org.au/about-us/news-and-media/media-releases/cancer-council-australia-and-public-health-leaders-call-for-junk-food-marketing-restrictions

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

胸部X線画像を表示したモニターを前に、医師が診断AIの解析画面を確認している様子。
画像診断AIは、胸部X線やCT、MRIなどの検査画像から異常が疑われる症例を拾い上げ、医師の読影を支援する。画像はイメージ。

診断AIは「導入して終わり」ではない、マウントサイナイなど米12医療グループが検証へ

画像検査が増える一方で、診断する医師の負担も重くなる。こうした課題に対し、AIを各医療機関が個別に導入するだけでなく、複数の大規模医療グループが共同で効果や…

医師らが、人体の血管や骨格を映したデジタル画像を見ながら解析している。
AIと血液中の多様な生体情報を組み合わせることで、循環器病のリスクをより詳しく評価できる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

心臓や血管の病気6種類、血液中のタンパク質などをAI解析しリスク予測を改善

- 従来の循環器病のリスク予測は、年齢や血圧などが中心で、一人ひとりの変化を十分に捉えにくい課題。 - AIで血液中の2920種類のタンパク質と168種類の…

室内で電子たばこを手に持ち、口元に近づけている人。
電子たばこ使用では、DNA損傷や酸化ストレス、口や呼吸器の炎症など、がんにつながり得る変化が報告されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

電子たばこ、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性

電子たばこは、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性が高い――。世界各地で行われた研究を幅広く検討した結果から、こうした結論が示された。オーストラリアのニューサ…

MRI装置の前に置かれたノートパソコンに、撮影画像や解析画面が表示されている。
MRI画像から脳腫瘍の遺伝子変異を予測できれば、手術や生検前に治療方針を検討する材料になる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

MRI画像から神経膠腫のIDH遺伝子変異を予測するAI、海外と日本で性能差

脳腫瘍の遺伝子変異を、手術や生検を行う前にMRI画像から予測できる可能性が見えてきた。国立がん研究センター、理化学研究所、東海大学、旭川医科大学などの研究グ…

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す