画像検査が増える一方で、診断する医師の負担も重くなっている。こうした課題に対し、AIを各医療機関が個別に導入するだけでなく、複数の大規模医療グループが共同で効果や安全性を確かめようとする動きが米国で始まった。
米国で複数の病院や診療所などを運営する12の大規模医療グループと、医療AI企業Aidocは、2026年8月に「ダイアグノスティックAIコンソーシアム(Diagnostic AI Consortium)」を設立した。
参加する医療グループには、マウントサイナイ・ヘルスシステム、ノースウェル・ヘルス、シーダーズ・サイナイなどが含まれ、合わせて年間約2000万人を診療している。
画像検査は増え、診断する人手が追いついていない
診断AIの導入では、医療データを解析するだけでなく、医師の判断や診療の流れとどう組み合わせるかが重要になる。画像はイメージ。
- CTやMRIなどの画像検査が増える一方、読影を担う放射線科医の不足が続き、診断までの時間が延びている。
- 米国では外来画像検査の読影時間が2014~2023年に2倍以上となり、人手不足が今後も続く可能性が指摘されている。
- 診断AIには異常が疑われる症例を見つけ、医師が優先して確認すべき患者を判断しやすくする役割が期待されている。
診断AIが求められる背景には、画像検査の需要が増える一方で、それを読影する放射線科医の確保が追いついていないという問題がある。
CTやMRIなどの画像検査は、病気を早く見つけたり、治療方針を決めたりするために欠かせない。一方で、人口の高齢化などを背景に検査の需要は増えており、放射線科医が確認しなければならない画像も増えている。
米国では、その影響がすでに診断までの時間に現れている。今回の発表によると、外来の画像検査では、読影にかかる時間が2014~2023年の間に2倍以上に延びた。
さらに、放射線科医がこの分野を離れる割合は、2020年以降、それ以前より50%高いとされている。研究者らは、高齢化によって画像検査の需要が新たに加わる放射線科医の数を上回る状態が続けば、人手不足は2055年まで続く可能性があると予測されている。
このため検査そのものを行えても、その画像を専門医が確認して診断につなげるまでに時間がかかることが、新たな課題になっている。
そこで期待されているのが診断AIだ。AIが画像や検査データを解析し、異常が疑われる症例などを見つけ、医師が優先して確認すべき患者を判断しやすくすることが期待されている。
ただし、今回の取り組みが重視しているのは、単にAIを入れて診断を速くすることではない。
医療AIは、導入した病院や使用する装置、患者の特徴が変われば性能も変わる可能性がある。時間の経過とともに精度が低下する「ドリフト」や、特定の患者集団で性能に偏りが出る問題もある。
そのため今回コンソーシアムを作った12の医療システムは、実際の診療でAIがどの程度安全に機能するか、診断までの時間を本当に短縮できるか、患者集団や医療機関、使用する装置によって性能に差が出ないかも、継続して確認する。
AIを「使う」だけでなく、継続して監視
診断AIは導入後も、性能の変化や患者集団による偏りを継続的に確認する運用体制が求められる。画像はイメージ。
- 12の大規模医療グループが共同で、AIによる診断の安全性や質、診断時間の改善効果を検証する。
- 導入後も、時間とともに精度が低下する「ドリフト」や、患者集団・施設・装置による性能差を継続して監視する。
- 複数施設で共通の評価方法や導入手順を整え、実際の医療現場で安全にAIを広げる仕組みづくりを目指す。
コンソーシアムでは、AIを使った診断の流れを複数の医療機関で共同設計する。
具体的には、優先すべき症例を早く確認できるようにし、診断を速め、重要な結果をより早く伝える仕組みを検討する。その上で、診断の安全性や質、診断までの時間がどの程度改善したかを参加施設で測定する。さらに、うまく機能した方法を、ほかの医療機関でも使える導入手順や管理方法として共有する方針だ。最初の成果は2027年に公表する予定としている。
こうした考え方は、日本で診断AIを広げる上でも参考になる。診断AIを医療現場に広げる際の課題は、「AIが病気を見つけられるか」だけではない。どの症例を優先させるのか、医師の判断とどう組み合わせるのか、導入後も精度をどのように監視するのかといった運用面が重要になる。
特に、病院ごとに機器や患者層、診療のプロセスが異なる以上、一つの施設で良い結果が出たAIが、別の施設でも同じように機能するとは限らない。今回の米国の取り組みは、複数の大規模医療機関で共通の基準を設け、AIの性能を継続して確かめながら広げようとしている点に特徴がある。
日本で診断AIを普及させる場合にも、単に導入施設を増やすだけではなく、複数施設で効果を確かめ、導入後も安全性や性能を追い続ける仕組みが重要になると考えられる。