心血管疾患の患者は「腎臓」もチェック、欧州心臓病学会が初の診療指針
eGFRと尿中アルブミンによるCKD確認と早期治療を重視

心臓や血管の病気がある人では、腎臓の状態も同時に調べることが重要になる──。欧州心臓病学会(ESC)は2026年8月、心血管疾患と慢性腎臓病を一体的に管理する初の診療ガイドラインを公表した。
心臓や血管の病気では、血液と尿の両方で腎臓を確認

- 心血管疾患と慢性腎臓病は互いに影響するため、両者を切り離さずに管理することが重要。
- 心血管疾患のある患者では、血液検査によるeGFRと尿検査によるuACRの両方を調べ、腎臓の状態を確認する。
- 一時的な変化と慢性的な異常を区別するため、3カ月以上の間隔を置いてeGFRと尿中アルブミンを再検査することが勧められる。
心臓や血管の病気と腎臓病は、別々の病気として扱われがちだが、今回のガイドラインでは、両者を切り離さずに管理することが重要だと強調された。
背景には、大規模な臨床試験で、慢性腎臓病の患者に適切な治療を行うことで、腎機能の悪化だけでなく心血管疾患のリスクも大きく減らせることが示されてきたことがある。
そこでESCは、慢性腎臓病を見つけ、治療につなげるための考え方を「STAMP on CKD」と名付けた。STAMPは英語で「印を押す」といった意味を持つ言葉でもあり、覚えやすい名称になっている。
実際には、「Screen(調べる)」「Triage(リスクを見極める)」「Address CKD Risk(腎臓病のリスクに対応する)」「Modify CVD management(心血管疾患の治療を調整する)」「Plan health services(診療体制を整える)」という5つの行動の頭文字を組み合わせたものだ。
最初の「調べる」段階では、心血管疾患のあるすべての患者について、腎機能を示す「eGFR(推算糸球体濾過量)」と、尿にアルブミンがどれくらい漏れているかを調べる検査を推奨している。尿中のアルブミン量をみる指標「uACR(尿アルブミン/クレアチニン比)」だ。
eGFRは血液検査から腎臓が血液をろ過する力を推定する指標で、尿中アルブミンは、腎臓に障害が起きていないかをみる手掛かりになる。どちらか一方だけではなく、両方を調べることがポイントだ。
また、一時的な変化と慢性的な異常を区別するため、3カ月以上の間隔を置いて、eGFRと尿中アルブミンの指標をそれぞれ2回測定し、慢性的な異常かどうかを確認することを勧めている。
腎臓病を早く見つけ、心臓と腎臓を同時に守る

- 慢性腎臓病が確認された場合は、腎機能だけでなく心血管疾患のリスクも考慮して早期に治療を進める。
- ACE阻害薬またはARB、SGLT2阻害薬などを適切に用い、患者によってはフィネレノンやセマグルチドも治療の選択肢となる。
- 腎機能に応じて心血管疾患の検査や治療を調整し、心臓と腎臓を一体的に管理することが重要。
その上で、リスクへの対応や治療の調整、診療体制の整備を進めることになる。
慢性腎臓病が確認された場合は、腎臓だけでなく心血管疾患のリスクも踏まえて治療を進める。
ガイドラインでは、慢性腎臓病の多くの患者に対し、ACE阻害薬またはARBと、SGLT2阻害薬を早い段階から適切に使用することを推奨している。いずれも腎機能の悪化を抑えるとともに、心血管疾患のリスクを下げることが期待される薬だ。
さらに、2型糖尿病があり、尿中アルブミンが増えている慢性腎臓病患者では、「フィネレノン」と呼ばれる薬や、GLP-1受容体作動薬の「セマグルチド」も、腎機能悪化や心血管イベントのリスクを減らす目的で推奨された。
一方、腎機能が低下していると、心臓や血管の病気の検査や治療の進め方を調整する必要がある。例えば、冠動脈の画像検査を行う場合や、血液を固まりにくくする薬を使う場合には、腎機能を踏まえて個別に判断することが求められる。
今回のガイドラインが強調しているのは、心臓や血管の病気の患者で腎臓病を早く見つけ、心血管と腎臓を別々ではなく一体として管理することだ。血液検査と尿検査という身近な検査から慢性腎臓病を拾い上げ、早期治療につなげることが、腎機能の悪化や心血管イベントのリスクを減らす鍵になるとしている。
参考文献
2026 ESC Guidelines for the management of cardiovascular disease and chronic kidney disease(European Society of Cardiology)
https://www.escardio.org/news/news-room/congress-news/2026-esc-guidelines-for-the-management-of-cvd-and-ckd/
Damman K, Ter Maaten JM, Mayne KJ, Bolignano D, Brown EM, da Costa BR, Dagre A, Gansevoort RT, Gavina C, Goette A, Gorog DA, Gotcheva NN, Kaluzna-Oleksy M, Kelly DM, Korzh O, Lees JS, Manfrini O, Martens P, Nunez J, Stabile E, Sudano I, Theodorakopoulou MP, Winther S, Herrington WG; ESC Guidelines Advisory Group. 2026 ESC Guidelines for the management of cardiovascular disease and chronic kidney disease, in collaboration with the European Renal Association (ERA). Eur Heart J. 2026 Aug 28\:ehag098. doi: 10.1093/eurheartj/ehag098. Epub ahead of print. PMID: 42661426.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42661426/
この記事の執筆者
星良孝
PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。









