研究

コーヒーや紅茶が認知機能低下を抑制?

13万人超を長期追跡、カフェインとポリフェノールに注目

カップにコーヒーを注ぐ様子
カップにコーヒーを注ぐ様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 1日2〜3杯のカフェイン入りコーヒーを飲む習慣が、認知症リスクの低下や認知機能低下の抑制と関係する可能性が示された。

 米ハーバード大学公衆衛生大学院などの研究者らが、2026年2月に発表した研究で明らかになった。

日常の飲み物と認知機能の関連は?

ティーカップに紅茶を注ぐ様子
ティーカップに紅茶を注ぐ様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 認知症は発症後の治療効果が限られるため、日常生活の中で取り組める予防策への関心が高まっている。
  • コーヒーや紅茶には、ポリフェノールやカフェインなど、神経保護作用が期待される成分が含まれている。
  • 研究では13万1821人を最長43年間追跡し、飲料の種類ごとに認知機能との関連を検証した。

 認知症は、治療法が限られ、症状が現れた後に得られる効果も限定的にとどまる。そのため発症前の予防への関心が高い。

 中でも、日常的に食べたり飲んだりする食品や飲料が、認知機能にどのような影響を与えるかは、多くの人にとって実践しやすい予防策につながり得る。

 そうした中で、コーヒーや紅茶には、ポリフェノールやカフェインなど、認知機能への影響が注目される成分が含まれる。これらの成分は、炎症や細胞障害を抑え、神経を保護する可能性があると考えられている。

 従来の研究では期待されていた一方で、調査期間が短かったり、飲料の種類による違いが十分に見分けられなかったりする課題があった。

 今回、研究グループは、看護師や医療従事者を対象とした研究データを用いて、コーヒーや紅茶と認知機能との関連について検証した。

 対象者は13万1821人で、食事内容、認知症の発症、主観的な認知機能低下や客観的な認知機能検査の結果が繰り返し評価され、最長43年間にわたって追跡された。

 研究では、カフェイン入りコーヒー、紅茶、デカフェコーヒーの摂取量ごとに、認知機能にどのような違いが生じるかを比べた。

 追跡期間中、1万1033人が認知症を発症した。

コーヒー2〜3杯、紅茶1〜2杯が効果

ポットからカップにコーヒーを注ぐ様子
ポットからカップにコーヒーを注ぐ様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • カフェイン入りコーヒーを多く飲む人では、ほとんど飲まない人に比べて認知症リスクが18%低かった。
  • 主観的な認知機能低下の割合も低く、一部では客観的な認知機能検査でも効果が確認された。
  • 効果が目立ったのはコーヒー1日2〜3杯、紅茶1〜2杯で、デカフェでは同様の関連が見られなかった。

 解析の結果、カフェイン入りコーヒーの摂取量が最も多いグループでは、ほとんど飲まないグループと比べて認知症リスクが18%低いことが確認された。

 さらに、主観的な認知機能低下を訴える割合も、カフェイン入りコーヒーを飲む人では7.8%であるのに対して、ほとんど飲まない人は9.5%と差が認められた。

 一部の指標では、客観的な認知機能検査でもカフェイン入りコーヒーの効果が確認された。

 紅茶でも同様の傾向が確認されたが、デカフェコーヒーではこうした関連は認められなかった。

 こうした結果から、神経を保護する効果にはカフェインが関わっている可能性がある。ただ、研究グループは、どの成分がどのようなメカニズムで作用しているのかは、今後の検証が必要としている。

 特に効果が目立ったのは、カフェイン入りコーヒーでは1日2〜3杯、紅茶では1〜2杯の摂取であった。これまでにはカフェイン摂取量が多いと不利益が生じる可能性を示した研究もあったが、今回の解析では、より高い摂取量でも顕著な悪影響は見られなかった。

 さらに注目されるのは、認知症の遺伝的リスクが高い人でも低い人でも、同様の傾向が確認された点だ。コーヒーやカフェインの恩恵は、遺伝的背景にかかわらず広く期待できる可能性がある。

 研究グループは、コーヒーによる効果は限定的である点も記している。

 認知機能を保つために、運動、睡眠、食事全体の質、人との交流などが注目されている。こうした要因と並び、コーヒー摂取との関連も一つの要素として位置づけられる可能性がある。

参考文献

Drinking 2-3 cups of coffee a day tied to lower dementia risk(Harvard Gazette / Mass General Brigham Communications)
https://news.harvard.edu/gazette/story/2026/02/drinking-2-3-cups-of-coffee-a-day-tied-to-lower-dementia-risk/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

胸部X線画像を表示したモニターを前に、医師が診断AIの解析画面を確認している様子。
画像診断AIは、胸部X線やCT、MRIなどの検査画像から異常が疑われる症例を拾い上げ、医師の読影を支援する。画像はイメージ。

診断AIは「導入して終わり」ではない、マウントサイナイなど米12医療グループが検証へ

画像検査が増える一方で、診断する医師の負担も重くなる。こうした課題に対し、AIを各医療機関が個別に導入するだけでなく、複数の大規模医療グループが共同で効果や…

医師らが、人体の血管や骨格を映したデジタル画像を見ながら解析している。
AIと血液中の多様な生体情報を組み合わせることで、循環器病のリスクをより詳しく評価できる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

心臓や血管の病気6種類、血液中のタンパク質などをAI解析しリスク予測を改善

- 従来の循環器病のリスク予測は、年齢や血圧などが中心で、一人ひとりの変化を十分に捉えにくい課題。 - AIで血液中の2920種類のタンパク質と168種類の…

農地と集落が広がる田園地帯の風景。
農薬への曝露は、農地周辺の地域環境や住民の健康リスクを考える上でも重要になる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

住む地域の環境とがんリスクに関連、複数の農薬の影響を受けやすい地域で平均150%高く

農業で使われる複数の農薬への環境曝露が多い地域では、がんの発症リスクも高い可能性があることが、ペルー全国を対象とした研究で示された。フランスのパスツール研究…

室内で電子たばこを手に持ち、口元に近づけている人。
電子たばこ使用では、DNA損傷や酸化ストレス、口や呼吸器の炎症など、がんにつながり得る変化が報告されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

電子たばこ、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性

電子たばこは、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性が高い――。世界各地で行われた研究を幅広く検討した結果から、こうした結論が示された。オーストラリアのニューサ…

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す