5-ALA(5-Aminolevulinic Acid、5-アミノレブリン酸)を用いた光線力学的診断、PDD(Photodynamic Diagnosis)は、膀胱がんや脳腫瘍で実用化されている。5-ALAから作られるプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)、PpIXががん細胞にたまり、青色光を当てると赤く光る性質を利用する方法だ。
PREVONOでは、第36回日本光線力学学会学術講演会・第22回日本脳神経外科光線力学学会で、5-ALAを用いたPDD、PDT、スクリーニング応用が議論されたことを伝えているが、さらに学会では、膀胱がんや悪性神経膠腫にとどまらず、肺がん、髄膜腫、悪性リンパ腫、胆道がんなど、他の領域での活用例や可能性も示された。
がんを光らせて見つける、あるいは光でがん細胞を攻撃する技術は、どの領域まで広がるのか。
肺がんではPDTが治療として実用化
第36回日本光線力学学会学術講演会の会場風景。(写真:編集部)
- 肺がんでは、5-ALAとは別の光感受性物質を用いた光線力学療法、PDTが治療として実用化されている。
- 中心型早期肺がんでは、気管支鏡で病変に光を届けやすく、PDTの臨床応用が進んでいる。
- 末梢肺がんでは、病変が肺の奥にあるため、光が届く範囲や治療反応を予測する技術が課題になる。
光線力学技術の臨床応用が進んでいる代表例が肺がんだ。
膀胱がんや悪性神経膠腫では、5-ALAを用いて病変を赤く光らせるPDDが診断技術として使われている。一方、肺がんでは、光線力学療法、PDTが治療として先行してきた。
肺がんPDTでは、主に5-ALAではなく、タラポルフィンナトリウム、商品名「レザフィリン」と呼ばれる光感受性物質が用いられる。光感受性物質を投与した後、気管支鏡で病変に光を照射し、腫瘍細胞にダメージを与える。
中心型早期肺がんに対するPDTは、既に治療として実用化されている。中心型肺がんは、太い気管支に近い部位に発生するため、気管支鏡で病変にアクセスしやすく、光を届けやすい。
学会でも、外来で行う日帰り治療が紹介されていた。
一方で、肺がんPDTにはさらなる課題もある。中心型病変では気管支鏡で光を届けやすいが、末梢肺がんでは病変が肺の奥にあるため、腫瘍全体に十分な光が届くかを評価する必要がある。
学会では、末梢肺がんに対して、光がどこにどれだけ届き、どの範囲で治療反応が起こるかを予測する「3次元数値モデル」の試みが紹介されていた。
髄膜腫でも応用の可能性
新来島高知重工ホールに設置された、第36回日本光線力学学会学術講演会・第22回日本脳神経外科光線力学学会の会場案内。(写真:編集部)
- 悪性神経膠腫で使われてきた5-ALAを用いたPDDを、髄膜腫にも応用する検討が進んでいる。
- 髄膜腫では、5-ALAによる蛍光が、手術中の腫瘍の可視化や残存腫瘍の確認に役立つ可能性がある。
- 悪性リンパ腫の脳病変でも、PDDを併用することで、生検時に腫瘍細胞を含む組織を採取する補助になる可能性が示された。
脳腫瘍領域では、悪性神経膠腫での応用が髄膜腫にも広がりつつある。
髄膜腫は、脳や脊髄を覆う髄膜から発生する腫瘍だ。多くは良性に分類されるが、発生部位によっては脳、神経、血管を圧迫し、手術での切除が必要になることがある。完全に切除できない場合や、再発が問題になる場合もある。そこで、5-ALAを使って腫瘍を可視化し、残存腫瘍の確認に役立てる応用が期待されている。悪性神経膠腫で実用化されてきた5-ALAを用いたPDDを、髄膜腫にも広げる方向で検討が進んでいる。
学会では、悪性リンパ腫に対する5-ALAを用いたPDDを併用した生検術の報告もあった。
悪性リンパ腫は、リンパ球ががん化する病気だ。全身のリンパ節や臓器に発生するが、脳に病変を作ることもある。脳病変では、画像だけで診断を確定することが難しく、組織を採取して病理診断を行う必要がある。
このとき重要になるのは、生検で腫瘍細胞を含む組織を確実に採取できるかという点だ。5-ALAを用いたPDDにより、蛍光を手掛かりに、腫瘍細胞を含む可能性のある組織を確認しながら採取できる可能性がある。
福井大学などの演題では、悪性リンパ腫に対する5-ALAを用いたPDD併用生検術が紹介された。PDDは、悪性リンパ腫が疑われる脳病変で、腫瘍細胞を含む組織を採取できているかを確認する補助になる可能性が示された。
胆道がんでは細胞株で可能性を検討
「光線医療たちの想造」をテーマに開催された学会で登壇する井上啓史氏。(写真:編集部)
- 胆道がんでも、5-ALAを用いた光線医療の可能性が細胞株を使って検討されている。
- 胆道がん細胞でPpIXが蓄積するか、光照射によって細胞傷害が起こるかが研究されている。
- 今後は、どの光感受性物質を使い、胆管などへどのように光を届けるかを検討することが課題になる。
胆道がんについても、5-ALAを用いた光線医療の可能性が模索されている。ただし、現時点では細胞株を用いた実験的な検討段階と位置づけられる。
胆道がんは、胆汁の通り道である胆管や胆のうなどに発生するがんだ。発見が難しく、進行して見つかることも多い。治療も容易ではなく、新しい診断や治療法の開発が求められている。
学会では、胆道がん細胞に5-ALAを加えたとき、PpIXがどの程度蓄積するか、光照射によって細胞傷害が起こるかが検討されていた。
胆管は管腔構造を持つため、内視鏡やカテーテルで光を届ける方法が考えられる。その際には、胆管の狭窄、胆汁の流れ、感染管理などの課題もある。
今後は、どのがんに、どの光感受性物質を使い、どのように光を届けるかを詰めることで応用範囲がさらに広がる可能性がある。