研究

1回の採血で複数のがんや肝疾患の検出へ、米国で血液検査「メチルスキャン(MethylScan)」開発

1,061人の血液試料で示された検出性能と臓器由来推定の可能性

血管内を流れる赤血球を表した図。
血液中を流れる赤血球を表した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 1回の採血で、複数のがんや肝臓の病気をまとめて調べられる方法が登場するかもしれない。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、血液中を流れるDNA断片を解析し、複数のがんや肝疾患、臓器の異常を検出する血液検査「メチルスキャン(MethylScan)」を開発した。

 研究では、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、胃がんのほか、複数の肝疾患を調べられる可能性が示された。異常な信号がどの臓器に由来するかを推定することもできたという。

血液中のDNAから病気の兆候を探す

青い手袋を着けた医療従事者が、採血管に血液を採取している様子。
採血管に血液検体を採取する医療現場。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 体の中では、役割を終えた細胞などが壊れると、その細胞に含まれていた小さなDNA断片が血液中に放出される。これは「細胞外遊離DNA」と呼ばれ、さまざまな臓器の状態を知る手掛かりになる。

 血液中のDNAからがんを調べる方法は、一般に「リキッドバイオプシー」と呼ばれる。これまでにも、がん細胞に特徴的な遺伝子変異を血液から探す検査が研究されてきた。

 メチルスキャンが主に調べるのは、遺伝子変異ではなく、DNAに付く「メチル化」という目印だ。この目印の付き方は臓器によって異なり、細胞ががん化したり、病気になったりしたときにも変化する。

 ただし、血液中に含まれる細胞外遊離DNAの約80~90%は、正常な血液細胞から出たものだ。そのため、がんや傷ついた臓器から出るわずかなDNAの信号が、正常なDNAに埋もれてしまうという課題がある。

 研究チームは、特殊な酵素を使い、解析の妨げとなる、正常な背景のDNAを事前に減らす方法を開発した。その上で、固形臓器由来のメチル化DNAを集め、メチル化のパターンを機械学習で解析した。

 あらかじめ背景のDNAを減らすことで、解析するデータ量を抑えながら、病気に関係する信号を見つけやすくした。これが、解析の低コスト化につながる。

早期がんの約55%を検出

青い手袋を着けた医療従事者が、採血管に血液を採取している様子。
採血管に血液検体を採取する医療現場。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 研究全体では、健康な人のほか、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、胃がんの患者、良性の肺結節がある人、肝疾患の患者など、計1061人分の血液試料を解析した。

 複数のがんを検出する解析では、がんではない人を正しく陰性と判定する「特異度」を98%に設定した。その条件で、メチルスキャンはすべてのステージを合わせたがん症例の約63%を検出した。

 早期がんに限ると、病気のある人を陽性と判定できた割合を示す「感度」は約55%だった。

 特異度98%とは、がんではない人の約98%を正しく陰性と判定したことを意味する。反対に、約2%は誤って陽性と判定される計算になる。一方、早期がんの約45%は検出できなかった計算だ。

 さらに、メチル化のパターンから、異常な信号がどの臓器に由来するかを推定できる可能性も示された。血液検査で異常が見つかった後、どの臓器を画像検査などで詳しく調べるべきかを判断する手掛かりになる。

 メチルスキャンは、がんだけでなく、B型肝炎やC型肝炎、アルコール関連肝疾患、代謝関連肝疾患などの違いを見分けられる可能性も示した。研究では、複数の肝疾患について、患者の約85%を正しく分類したという。

 また、肝硬変やB型肝炎などがあり、肝臓がんの発症リスクが高い人を対象とした解析では、肝臓がんの約80%を検出した。このときの特異度は90%をわずかに上回る水準だった。

 研究チームによると、1試料の解析に必要なシーケンスデータは5ギガベースで、1ギガベース当たりの価格が4ドル未満であれば、DNAの読み取りにかかる費用は20ドル未満になると試算されている。

 研究チームは、DNAの読み取りにかかる費用を1試料当たり20ドル未満に抑えられる可能性があるとしている。ただし、採血や試薬、データ解析などを含む検査全体の費用ではない。

 また、MethylScanだけでがんや肝疾患を診断できるわけではなく、陽性の場合は画像検査や組織検査などによる確認が必要になる。実際のがん検診への導入には、今後さらに検証が必要となる。

参考文献

UCLA researchers develop low-cost blood test to detect multiple cancers and other diseases from a single sample(UCLA)
https://newsroom.ucla.edu/releases/ucla-develops-blood-test-to-detect-multiple-cancers-disease

Zeng W, et al. Toward the simultaneous detection of multiple diseases with a highly cost-effective cell-free DNA methylome test. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2026;123(15):e2518347123.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13080018/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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