病院が画像診断AIを導入する際、性能だけでなく「費用を誰が負担するのか」が大きな課題になる。米国では、その一部を公的医療保険で支える動きが始まる。
医療AI企業エイドック(Aidoc)は2026年8月、CT画像を解析する診断支援AI「CARE Body CT Multi-Triage」について、米国で高齢者などを対象とする公的医療保険「メディケア」の「新技術追加支払い(NTAP)」の対象になったと発表した。2026年10月1日から適用が始まる。
増えるCT検査、緊急性の高い症例をAIが選別
CT画像をAIで解析し、緊急性の高い症例を医師が優先して確認できるよう支援する技術が広がりつつある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
胸部、腹部、骨盤のCTをAIで解析し、緊急性の高い異常が疑われる症例を自動で抽出する。
医師が優先して確認すべき症例を整理し、診断や治療までの時間短縮を支援する。
AIが診断を確定するのではなく、時間を争う症例を早く医師の確認につなげることが目的。
診断AIが求められる背景には、CTなどの画像検査が増える一方、それを読影する医師の負担も大きくなっていることがある。エイドックの分析によると、腹部CTは米国で行われるCT検査の40%以上を占める。同社が引用する2026年の研究では、急性期に行われる腹部のCTやMRIなどの画像検査の半数以上が、入院または救急の場で実施されている。
救急や入院では、腹痛などを訴える患者について短時間で多数の画像を確認し、緊急性の高い病気を見逃さずに対応する必要がある。今回対象となった「CARE Body CT Multi-Triage」は、胸部、腹部、骨盤の造影および非造影CTを解析する診断支援AIだ。AIが緊急性の高い複数の異常を疑う所見を検出し、医師が優先して確認すべき症例を整理する。目的はAIが診断を確定することではなく、時間を争う症例を早く医師の目に届け、診断や治療までの時間を短縮することにある。
このAIは2025年9月に米国食品医薬品局(FDA)からブレークスルーデバイス指定を受け、2026年1月にはFDAの販売許可を取得している。
AI導入の壁「費用」に公的保険で対応
診断AIは医師の判断を置き換えるものではなく、画像確認の優先順位づけや診断までの時間短縮を支援する。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
米国の公的医療保険メディケアで、このAIを使った一部の入院診療に追加支払いが認められた。
2026年10月1日から、一定の条件を満たす入院患者への利用で、病院は通常の診療報酬に加えて支払いを受けられる。
診断AIの普及には性能や安全性だけでなく、病院が継続して導入できる費用負担の仕組みも重要になる。
今回注目されるのは、AIの性能そのものだけではない。
病院が診断AIを使うための費用について、公的医療保険から追加の支払いを受けられる仕組みが設けられた点だ。NTAPは「New Technology Add-on Payment(新技術追加支払い)」の略で、新しい医療技術を入院診療に導入した場合、一定の条件を満たせば通常の診療報酬に追加して支払いを受けられる米国の制度だ。新しい技術の導入によって病院側の費用負担が大きくなることを抑え、患者が新しい医療技術を利用しやすくする狙いがある。
2026年10月1日から、メディケアの対象となる一部の入院患者でこのAIを使用した場合、一定の条件を満たせば、病院は通常の入院診療への支払いに加えて追加の支払いを受けられる。エイドックによると、この仕組みは今後3年間利用できる予定だ。ただし、メディケア加入者なら誰でも自動的に対象になるわけではない。対象となるのは、制度の条件を満たした入院患者への利用であり、病院側が個々の症例について要件を確認する必要がある。
診断AIは、FDAから販売許可を得ても、それだけで医療現場に広く普及するとは限らない。導入費用やシステムとの接続、日常診療への組み込みなど、病院側の負担が残るためだ。
診断AIを医療現場に広げるには、性能や安全性だけでなく、病院が導入し続けられる費用の仕組みも重要になることを示す動きと考えられる。