トイレで排尿するだけで、体の変化を日常的にチェックできる──。そんな「診るトイレ」の開発が進められることになった。
Craif(クライフ)は2026年8月、名古屋大学と共同で進める「トイレ統合型デバイス」の研究開発が、経済産業省・中小企業庁の「成長型中小企業等研究開発支援事業」に採択されたと発表した。
健診では捉えにくい変化を毎日の排尿から
排尿の機会を使って体の変化を測る「診るトイレ」の開発が進められている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 年1回程度の健診では捉えにくい体の変化を、毎日の排尿を通じて継続的に確認する仕組みを目指す。
- 排尿時に尿を自動で取り込み、電気化学的な検出技術とマイクロ流路を使って、その場で成分を測定する。
- 利用者が特別な採尿作業をしなくても、採取から測定までをトイレ内で自動化する構想となっている。
病気の予防や早期の対応には、体の変化を継続して把握することが重要になる。一方、健康診断や特定健診は年1回程度であることが多く、その間に起こる変化までは捉えにくい。
Craifによると、2023年度の特定健診の受診率は59.9%で、国の目標である70%を下回っている。また、スマートウオッチなどのウエアラブル機器では心拍数や体温などを継続的に測れるようになったが、血液や尿に含まれる体内の成分を日常的に測定する仕組みはまだ十分に確立されていないという。
同社は「尿」に注目している。採血と違って針を刺す必要がなく、自宅で日常的に採取しやすい。毎日行う排尿そのものを健康チェックの機会にできれば、利用者が特別な作業をしなくても、体内の変化を継続して追える可能性がある。
今回開発する「診るトイレ」では、排尿時に尿を自動で取り込み、その中に含まれるバイオマーカーをその場で測定する。電気化学的な検出技術と、少量の液体を自動で扱う「マイクロ流路」と呼ばれる仕組みを組み合わせ、採取から測定までをトイレの中で完結させる計画だ。医療機関に検体を持ち込んで結果を待つのではなく、その場で測定する「ポイントオブケア」の考え方を、日常的に使うトイレに取り入れようという試みとなる。
尿酸など複数の指標を測れる仕組みへ
トイレで排尿するだけで尿中成分を測定し、日常の健康チェックにつなげる仕組みが構想されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 将来的には尿酸など複数のバイオマーカーを測定し、1台のトイレで複数の健康指標を確認できるようにする。
- Craifが培ってきた尿中バイオマーカーの検出技術やAIの知見も生かし、日常的な健康チェックへの応用を目指す。
- 現段階は研究開発であり、測定できる項目や精度、健康状態の変化をどこまで捉えられるかは今後検証される。
今回の研究では、一つの成分だけを測る装置ではなく、将来的に複数のバイオマーカーを測定できる仕組みを想定している。
Craifは、将来的に尿酸など複数のバイオマーカーへ測定対象を広げる計画だ。1台のトイレで複数の健康指標を確認できる仕組みを目指している。
同社はこれまで、尿などの体液からDNAやマイクロRNAといったバイオマーカーを検出する技術とAIを組み合わせ、がんの早期発見につながる検査の開発を進めてきた。
今回発表されたのは完成した製品ではなく、国の支援事業に採択された研究開発計画となる。実際にどのバイオマーカーをどの程度の精度で測定できるのか、健康状態の変化をどこまで捉えられるのかは、今後の開発で検証される。排尿という日常の行動を、継続的な健康チェックにつなげられるかが今後の焦点となる。