研究

12問で食事の質を評価 日本人向け簡易スコアを東大が開発

健診や保健指導で活用へ、1~3分で食生活を見える化

焼き魚や味噌汁、副菜などが並ぶ和食の一膳
魚や野菜を中心としたバランスの良い和食の例。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 食事の質を、わずか12問で把握するための日本人向け簡易ツールが開発された。

 東京大学大学院医学系研究科の研究グループが2026年4月に発表した。

健康的な食べ方を点数化する日本人向けスコア

12項目の質問で食事の質をスコア化する仕組みを示した図
12問の質問により食事の質を数値化する評価方法の概要。(出典:東京大学)
  • 日本人の食生活に合わせ、食事全体の質を0~30点で評価する「日本人のための食事の質スコア(DQSJ)」が開発された。
  • 野菜、果物、魚、豆類などの摂取が多いほど高得点となり、肉・加工肉、砂糖入り飲料、食塩が少ないほど高得点となる。
  • 従来の詳しい食事調査に比べ、12問で健康的な食べ方の傾向を把握できるよう設計された。

 食事の質とは、特定の食品や栄養素だけを見るのではなく、食事全体として健康に望ましい内容になっているかを総合的に評価する考え方だ。慢性疾患や早期死亡の予防には、個別の栄養素だけでなく、日々の食べ方の全体像を捉えることが重要とされている。

 今回の研究で用いられたのは、「日本人のための食事の質スコア(Diet Quality Score for Japanese、DQSJ)」。日本人のための食事の質スコアは、食と健康に関する科学的根拠に基づいて、日本人の食生活に合わせて開発された指標だ。

 このスコアでは、野菜、果物、豆類、魚、全粒穀物、ナッツ、乳製品の摂取量が多いほど点数が高くなる。一方で、牛肉や豚肉などの肉や加工肉、砂糖入り飲料、食塩の摂取量が少ないほど高得点となる。

 健康に関係する複数の食品や栄養素を組み合わせ、食事全体の質を0~30点で評価する仕組みだ。

 これまで食事の質を調べるには、50問以上の質問票や、数日間にわたる食事記録が必要になることが多かった。こうした方法は詳細な情報を得られる一方で、回答者の負担が大きく、健診や保健指導のように時間が限られる場面では使いにくいという課題があった。

 研究グループは、この課題に対応するため、日本人のための食事の質スコアの10項目と総スコアをできるだけ少ない質問で測定できるように設計した。質問票は12問で構成され、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ、豆類、乳製品、魚、砂糖入り飲料に各1問、牛肉や豚肉などの肉と加工肉に2問、食塩に2問を割り当てた。

 開発には、日本人成人392人の食事データが用いられた。4日間の食事記録と食事歴質問票を分析し、各食品群の摂取頻度と実際の摂取量の関係を調べた。その上で、食と健康に関する研究成果、日本人の食事摂取量の特徴、既存の食事評価法などを踏まえ、質問内容や回答ごとの点数が決められた。

健診や保健指導などに活用の道

日本人のための食事の質スコアの構成要素と、推奨される食品・控える食品を示した図
日本人のための食事の質スコアの構成と、摂取を推奨・制限する食品群の概要。(出典:東京大学)
  • 開発された質問票は過去1カ月の食習慣を尋ね、簡単な足し算でDQSJを算出できる。
  • 回答時間はおおむね1~3分で、健診、保健指導、自治体や企業の健康づくりでの活用が期待される。
  • 詳細な栄養素量を測るものではなく、今後は大規模な検証を通じて健康状態との関係をさらに調べる予定だ。

 開発された質問票では、回答者が過去1カ月の食習慣について、摂取頻度や量を選択する。各回答には点数が割り当てられており、合計することで0~30点の日本人のための食事の質スコアを算出できる。点数が高いほど、健康に望ましい食事パターンに近いことを意味する。

 特徴は、短時間で実施できる点だ。論文では、この質問票はおおむね1~3分で回答できるとされている。紙媒体でも実施可能で、複雑な計算ではなく、簡単な足し算でスコア化できる。こうした簡便さは、医療機関や自治体、企業などでの健診や保健指導に向く。

 食事評価は、健康づくりの入り口になる。例えば、食事の質が低い可能性のある人を早く見つけ、栄養相談や生活習慣改善につなげることができる。企業の健康経営、自治体の保健事業、研究調査などでも、食事を短時間で把握する方法として役立つ可能性がある。

 一方で、この質問票は万能な食事調査ではない。食品の摂取量の絶対値や、エネルギー、ビタミン、ミネラルなどの詳細な栄養素量を測るものではない。食事回数、間食、調理法などを詳しく調べる場合には、食事記録やより詳細な食事調査票が要る。

 また、現在は質問票の妥当性が検証されている段階だ。研究グループは、今後、1000人以上を対象とした検証や、2万人規模の働く成人を対象とした大規模調査での活用を通じて、スコアと健康状態との関係をさらに調べる予定としている。妥当性が確認されれば、短時間で食事の質を評価できる実用的な手段として、幅広い場面での活用が期待される。

 食事の改善には、まず自分の食べ方を知ることが欠かせない。12問で食事全体の質を見える化する今回の研究は、科学的な食事評価を日常の保健活動に近づける取り組みだ。

参考文献

Development of a twelve-item screener for assessing diet quality in Japan(British Journal of Nutrition / Cambridge University Press)
https://doi.org/10.1017/S0007114526106837

日本人の食事の質を短時間で評価する12問の質問票を開発(東京大学)
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400285948.pdf

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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